トップメッセージ

AN INTERVIEW WITH KAZUHIRO HATANO

海外事業拡大により成長を続け、中長期的な企業価値向上を目指す

ガバナンスを強化しグローバルCROとしての経営基盤を確立

Q. 米国事業が好調ですが、どのように評価されていますか。

A.　創業当初から日本発のグローバルCROになることを目指していましたので、世界最大の医薬品市場である米国での事業展開は必須と考えていました。そのため、創業から3年後の2008年にグループ初の海外拠点を米国カリフォルニア州に作りました。その後アジア、欧州と海外展開を進め、米国では2018年4月に現地のAccelovanceというCROを買収し、売上を15億円にまで一気に拡大することができました。

とはいえ、初年度は4.5億円の営業赤字という状況でした。すぐに経営改革に着手し、翌年には黒字に転換。その後は順調に右肩上がりの成長が続いています。粘り強く理念と文化を伝えていくことで経営が安定してきた手ごたえがあります。買収から6期目となった2024年3月期は売上が3倍の45億円、営業利益は6.5億円の黒字にまでに成長し、連結業績に大きく貢献しています。

今後も当面、米国が最大の医薬品市場であり、新薬開発の中心地であり続けると見ています。リニカルにとっても米国事業がグループ全体の成長ドライバーです。よって、戦略市場として成長投資を行っていく考えです。特にM＆Aは一足飛びに事業基盤を拡大できるチャンスであり、常に機会をうかがっています。

Q.  どのような将来構想を描いていますか？ 

A.  世界のCRO市場は現在5兆円ほどという統計があり、世界の医薬品市場の拡大に伴い、年々成長していくと想定しています。特にアメリカでの新薬開発は非常に活発ですので、ここでシェアを取ることが今後のリニカルの成長にとっては非常に重要です。繰り返しとはなりますが、米国での将来のM&Aも視野に、人材の採用と育成を進め、事業基盤を拡大していきます。

継続して海外事業を拡大していくためには、経営基盤のグローバル化は必須です。今回導入したCXO体制では、海外子会社を含むグループ横断での担当領域の執行責任をCXOが担います。これにより、QCD（品質、コスト、納期）のすべてでグローバル全体でのレベルアップを図り、真のグローバルCROとしての基盤を固めていきます。

中長期的には、グローバルで従業員を現在の約2倍の1500名規模にし、60か国程度への進出を目指します。

Q. 日本ではドラッグ・ロスが拡大しているという指摘があります。内資同業他社の上場廃止というニュースもありました。日本事業にはどう取り組んでいきますか？

A.　日本の医薬品開発を取り巻く状況は大きく変化しています。海外で承認された薬が日本では手に入らない「ドラッグ・ロス」については、厚生労働省などが解消に向け検討を進めており、規制の見直しが始まっています。現在の創薬の主役は、欧米の新興バイオ医薬品企業です。大手製薬企業であっても創薬シーズをベンチャーなどそうした企業に依存する傾向があります。新興企業は大手とは違い、日本での開発を欧米と同時に行うことは少ないため、こうした企業を日本にどう呼び込むかがポイントです。

まず当社には欧米に拠点がありますので、新興バイオ企業とは現地でのビジネスを通じて信頼関係を構築しています。当初はベンチャーだった顧客が、現在では日本の中堅製薬企業規模に成長しているケースもあります。この顧客ネットワークを活用し、日本での治験の誘致に取り組んでいます。

またリニカルは、創薬支援事業として、これから日本の医薬品市場へ参入しようとしている、国内外の企業に対するコンサルティングサービスを提供しています。2017年の立ち上げから着実に実績を積み重ね、当期は過去最高の売上高を記録しました。現在、欧米の子会社と営業段階から連携し、海外新興バイオ企業を日本市場へ誘致する活動を強化しています。

リニカルは日本発グローバルCROとして、日本のドラッグ・ロスを防ぐために継続的に取り組んでいきます。

Q. 最後に、株主の皆さまへのメッセージをお願いします。

A.　 2013年にヨーロッパ、2018年にはアメリカのCROを買収し、どちらの事業も成長させてきました。海外企業のM＆Aに成功している日本企業は多くはありません。買ったままで放置せず、徹底して現地と向き合ってきました。リニカルにとってM＆Aは、今後、米国で成長を加速させるために必須と考えています。これまでの買収を成功させてきた実績で、さらに大きく成長していけると自信を持っています。 

今後も、成長投資を実行しながら収益力強化に努め、利益還元につきましては、引き続き安定した配当によりお応えしてまいります。

株主の皆様におかれましては、引き続き長期的な視点でリニカルを応援いただけますよう何卒よろしくお願い申し上げます。