臨床試験におけるサステナビリティの推進 : 2025年の展望

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サステナビリティへの世界的な関心が高まる中、あらゆる業界が環境、社会、ガバナンス (ESG) の目標に沿うように、これまでの慣行の見直しを行っています。医療の進歩に不可欠な分野である臨床試験においても例外ではありません。2025年現在、臨床試験プロセスにサステナビリティの取り組みを取り入れることは、もはや先進的な考えではなく、業界のスタンダードとなりつつあります。

臨床試験においてサステナビリティが重要な理由

臨床試験では多くの資源が消費されます。大規模なグローバル試験では広範囲に移動が必要となりますし、ラボで使い捨てプラスチックを使用するなど、臨床試験が環境に与える影響は小さくありません。さらに、サステナビリティの社会的側面は、患者募集の際の公平性や、地域社会との関わりをなどのテーマを含み、倫理的に試験を遂行するための重要な要素です。

サステナビリティ戦略の実践は、環境への影響を軽減するだけでなく、医薬品開発受託機関 (CRO) と製薬企業が、患者や規制当局、投資家などのステークホルダーの様々な期待に応えることにつながります。サステナビリティへの取り組みは、臨床試験が社会的責任のある、環境に配慮した取り組みとして、永続できるようにするものです。

2025年の注目分野
  1. 分散型臨床試験 (DCT): デジタルツールを活用して遠隔で試験を実施する分散型モデルは、臨床試験の環境への影響を大きく低減させます。DCTは、患者の移動を最小限に抑え、物理的な施設の必要性を減らすことで、温室効果ガス排出量と資源消費量を削減します。ウェアラブルデバイス、遠隔診療、モバイルラボは、この変革を促進するための不可欠なツールとなっています。
  2. 環境に配慮したサプライチェーン: 持続可能なサプライチェーンへの移行が勢いを増しています。臨床試験の関係者は、治験キットに環境に配慮した材料を調達し、再利用可能な輸送容器を採用し、廃棄物と排出量を削減するために物流を最適化するようになってきています。これらの変化により、環境への影響を最小限に抑えながら、治験の効率性を維持することができます。
  3. データによる効率化: 人工知能 (AI) とビッグデータ分析が進歩することで、治験デザインを最適化し、患者のアウトカムを予測してデータ収集の精度を向上させることができるようになりつつあります。こうしたテクノロジーにより、治験期間と必要な参加者の数を減らすことで、資源の節約と廃棄物の削減に貢献します。
  4. グリーンラボ: ラボでは、エネルギー効率の高い機器、使い捨てプラスチックのリサイクルやより環境に優しい化学物質への代替など、サステナブルな方法を採用しはじめています。「グリーンラボ」が2025年現在の治験関連施設での基本的な考え方となりつつあります。
  5. コミュニティ中心のアプローチ: サステナビリティの社会的側面は、環境への配慮と同様に重要です。特にマイノリティの人々において患者の募集を公平に実施することは、試験が包括的で代表的であることを保証します。さらに、臨床研究に対する意識を高めるために地域社会と協力することは、信頼と透明性を育みます。
業界全体の協力

臨床試験におけるサステナビリティへの動きは、ステークホルダー間の協力によって推進されています。規制当局は、コンプライアンスの枠組みにESG基準をこれまで以上に取り入れるようになっており、CROや製薬会社がサステナビリティの取り組みを実践することを奨励しています。業界団体や非営利団体も、基準を定義し、ベストプラクティスを共有する上で重要な役割を果たしています。

課題と機会

サステナビリティの道のりには、先行投資コストや組織内の文化的変革の必要性などの課題がありますが、長期的にはこれらのハードルを上回る利益をもたらします。 サステナビリティを推進する企業は、レピュテーションを高め、患者の信頼を向上させ、業務を合理化することができます。

まとめ

2025年現在、臨床試験におけるサステナビリティは、業界全体で共有する責任であり、イノベーションの機会でもあります。治験業界は、環境スチュワードシップと社会的公平性を重視することで、ヘルスケアを進歩させるだけでなく、より健全な地球に貢献します。未来を見据えて持続可能な臨床試験に取り組むことにより、将来世代の医療の発展に新たな展望が生まれることでしょう。

Author:
Ali Cundari
Senior Director, Marketing and Corporate Communications

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