臨床試験の立ち上げ時期であるスタートアップフェーズは、試験全体のマイルストーンを予定通り達成していくための鍵になります。中でも重要な治験実施施設の立ち上げを速さと質の両面で支援するCROの役割についてご説明します。
スタートアップフェーズはどんな試験においてもきわめて重要です。プロジェクトが動き出すこの段階でできるだけ多くの疑問点を洗い出し、(できれば)すべてに回答を見つけておくべきです。プロジェクトチーム全員が参加し、協力するフェーズでもあります。システムをはじめプロセス、プラン、ツール、そしてベンダーを選定し、合意を得ることが重要です。こうした議論に時間をかけ、計画として文書化することで、プロジェクトとチーム全体が成功する準備が整います。
また、このフェーズは包括的なリスクマネジメントを行うべきタイミングでもあります。チームメンバーそれぞれが、リスクの識別と評価、その対策の策定において貴重な役割を果たします。この試験では組入に時間がかかりそうでしょうか?そのリスクが高いのであれば、施設での症例登録を促進する方法や、その他の施策をチームで検討します。試験デザインの性質からしてプロトコルの遵守に課題が出てきそうでしょうか?その場合は、施設スタッフや関係者へのトレーニングを強化することが意義のある施策となるかもしれません。
施設の立ち上げプロセスとタイムラインに限って言えば、プランニングも同様に重要です。私は、施設の立ち上げがどれだけ迅速に行えるかが、症例登録に最も大きな影響を与えると確信しています。各施設の組み入れ機会を最大化することが、試験のマイルストーンを予定通りに達成していくための鍵です。もちろん、スピードだけではなく質も必要です。確実に各施設の準備が整っており、意欲をもって取り組んでもらえるように注力する必要があります。
では、立ち上げを成功させる戦略を立てる際に、具体的に何を考慮すればいいのでしょうか?以下の項目のすべてを評価する必要があります。
Linicalでは、施設の立ち上げ計画の策定は、上記の事項の対応方法を明確にするための重要なステップと位置付けています。これには、主要な研究文書(ICF、施設との契約、予算など)の変更するための方法も含まれます。
これは、施設立ち上げのロードマップとなりますが、計画通りに進まないこともあります。問題が発生し、遅れが生じる場合でも、計画があることで試験の基盤がより堅固になり、何かが変わった際にプロジェクトチームが最善の対応策を取ることができます。チームが、発生しうる事態について考え、どのように対応するかを準備しておけば、リスクを事前に軽減することができます。ベンジャミン・フランクリンは「If you fail to plan, you are planning to fail(計画を怠るのは、失敗する計画をたてることだ)」と述べています。
施設では、スケジュール通りにプロジェクトが進んでいる限り、試験への参加意欲が最も高い状態が維持されます。自分たちのコントロール外の事情で待ったをかけられると、予期せぬ時間とリソースのやりくりに追われることになります。遅れの程度によっては、他の試験に移ってしまうこともあります。試験ができるだけスケジュール通りに開始できることが施設の成功の鍵であり、計画通りの症例登録と成果物の提供がより確実となります。
経験豊富なCROは、効果的な試験の立ち上げ戦略を策定し、その計画を実現するために必要なスキルを持っています。Linicalは、試験の開始段階から終了まで、さまざまな課題に対処し、時間と費用を抑え目標を達成するためのサービスを提供しています。
文責:
Aaron Sanford
Senior Director, Study Start Up