AIに関する話題がますます盛んになっている昨今、ソフトスキル(論理的思考やコミュニケーション力など仕事を進める上で基礎となるスキルのこと)の開発は職場での効果的な働き方のために重要です。しかし、TeamsやZoomなどに大いに頼るリモートワークの環境下では、ソフトスキルの習得は大きな課題になっています。同僚との対面でのやり取りが定期的に行えず、円滑なコミュニケーションや協力関係構築のための微妙なニュアンスを読み取ることが難しいためです。オンラインツールでのコミュニケーションが主流のバーチャル環境でソフトスキルを開発するにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、いくつかの実践的な方法をご紹介します。
共感力や創造性、問題解決などのソフトスキルの開発は、特にフルタイムのリモートワークの場合に大きな課題となります。同僚との定期的な直接対話がないため、効果的なコミュニケーション、協力関係、チームワークに不可欠なソーシャル・キュー(身振り手振りや目配せなどの社会的合図)や微妙なニュアンスをつかむことが難しくなります。
この課題に対処するためには、オンラインでのコミュニケーションによる職場環境でソフトスキルを向上させるための方法を探る必要があります。オフィスで同僚から受けるような質の高いフィードバックを得るために積極的な行動をとることは、プロフェッショナルとしての成長に不可欠です。
ある調査によると92%の人材専門家が、ソフトスキルは、ハードスキルあるいはテクニカルスキルと同じくらい、もしくはそれ以上に重要だと述べています。フランス語やスペイン語などでは、ソフトスキルは「compétences/competencias transversales」と呼ばれ、あらゆる職場環境で展開できるスキルであり、成功に不可欠なものとされています。
リモートワーカーとしてソフトスキルを磨くのは簡単ではないかもしれませんが、不可能ではありません。バーチャルワークの環境下では、意識的にコミュニケーションを行い、自分がどのような印象を与えるかを考えることが重要です。在宅勤務中にソフトスキルを向上させたいと考えている人は、ぜひ次のステップを試してみてください。
内省から始める
ソフトスキルを向上させるためには、まず強化したい具体的なスキルを特定することが重要です。技術的なスキルや知識にばかり焦点を当てるのではなく、自身の成長を考える必要があります。これには、内省を通じて自身の強みや弱みを評価し、友人や同僚、メンターからの率直なフィードバックを受けることが含まれます。目標とするスキルが特定されたら、計画やロードマップを作成します。例えば、コミュニケーション力に焦点を当てた場合、パブリックスピーキングのワークショップやサークルに参加したり、「説得的コミュニケーション」に関するオンラインコースを受講したりすることが具体的な手段となります。
戦略的エンゲージメント:有意義なつながりを築く
通路での雑談やチームビルディングイベントなどのカジュアルな交流がない場合、どうやって同僚との関係を構築すればよいでしょうか。「目的のある雑談」でお互いの共通点や共有できる価値観をみつけ、相互理解を深めることをお勧めします。ちょっとした仕事の好き嫌いに関する質問から始め、徐々に趣味や熱中しているもの、個人的なモチベーションなどを深く掘り下げていきましょう。こうした会話は信頼関係を構築するだけでなく、EQ(こころの知能指数)を向上させる機会にもなります。ここでのゴールは必ずしも親しい友人関係を築くことではなく、尊重と信頼の基盤を確立することです。同僚が仕事以外ではどんな人物なのかを理解するようにしてみてください。その時には、カメラをオンにすることも忘れないようにしましょう。「黒い箱」と有意義なつながりを築きたいと思う人はいませんから。
同僚が「見られている」「聞かれている」と感じるようにする
スクリーン上での会議が主流のバーチャルワーク環境では、アジェンダに厳密に従って直接本題に入る傾向があります。しかし、会議中の一見何もしていないように見える時間を過小評価してはいけません。同僚とつながり、関係を構築する機会だと考えてください。「アクティブリスニング」を実践することで、すべての参加者が他の人の話に注意を払い、その場で共有された個人的な特徴を覚え、言及できるようにします。関係を深めるためには、休みの予定やペットの名前などの個人的な情報をメモにとり、その情報を使って丁寧なフォローアップを行うなどの方法もあります。目的は同僚が仕事の枠をこえて認められ、大事にされていると感じるようにすることです。
フィードバックを求める
リモートワーク環境では、自然発生的にコーチングを受けるという機会は限られますので、チームメンバーやマネージャーに自分からフィードバックを求めることが重要です。定期的なミーティングやその場で感想を聞くケースなどがあり得ます。例えば、業務の打ち合わせ中に、自身の成長とソフトスキルの開発に興味を示すことで、今後のフィードバックの機会を作ることができます。ミーティングやプレゼンテーションの前にマネージャーに積極的にフィードバックを尋ねることも有効です。リモート環境をうまく使い、ダイレクトメッセージでリアルタイムのフィードバックをもらったり、自分が考えている以外の方法について具体的な質問をしてみたり、どの主張がグループの共感を得られるかを確認したりすることもできそうです。狙いは対面でのやり取りで得られるような、微妙なソーシャル・キューをつかむことです。
自身のWork Ethics(労働倫理)を示す
リモートワーカーとして信頼を獲得し、ソフトスキルを示すには、さらなる努力が必要です。これには、時間とタスクを効果的に管理し、優先順位をつけ、計画の変更に柔軟に対応することが含まれます。オフィスでの場合と同じように、具体的な成果と素早い対応を通じて自身の誠実な勤務態度を示しましょう。期待に応えようと努め、納期を守りましょう。定期的にコミュニケーションを取り、信頼できるチームメンバーであることを示してください。一方で、集中する時間を確保することも重要です。集中するためにオフラインにする必要がある場合は、マネージャーやチームメンバーに伝えて、業務から離れるのではなく、生産性を高めるためのサインであることを理解してもらいましょう。
バーチャルワーク環境でソフトスキルを開発するために覚えておくべき原則まとめ
すべきこと:
- 伸ばしたいソフトスキルを特定し、その開発に必要な活動を織り込んだ計画を立てる。
- 好奇心を持ち、アクティブリスニングを実践し、同僚の重要な特徴をメモして、相手に関心のあることを示す。
- バーチャルワーク環境で成長機会を確実に得るため、積極的にフィードバックを求める。
すべきでないこと:
- 受け身の話好きにならない。目的をもった質問を投げかけることで積極的に同僚とつながりましょう。
- 長期間姿を消さない。リモートで信頼関係を築くためには高い倫理感を示してください。